《CM考査の基礎知識その4》広告主のメリット

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レモンの原理

広告規制の議論では、「消費者の利益の確保」がもっぱらテーマとなることが多いのですが、広告主にとっては規制されるだけで、何のメリットもないのでしょうか。

放送広告は、視聴者(消費者)に利益をもたらすことを目的としています。必要な情報を基に消費者は自由な商品選択ができるわけですから、考査(広告規制)を通過した広告によって消費者が利益を得ることは明白です。

一方、規制されることで「我慢」を強いられる格好になる広告主はどうでしょうか。もし、何の利益もないとしたら、広告規制は永久に企業(広告主)にとっては「招かざる客」であり、経済全体から見ても望ましいものではないということになってきます。

レモンの原理という考え方があります。これを適用してこの問題を考えてみましょう。

【レモンの原理】

経済学のレモンの原理は、情報が非対称である状況を対象にした理論であるが、これは、市場を育てていく上で、事業者から消費者に正確な情報が伝わること(適正な表示)が重要であることを示している。

英語のレモンには日本語でのイメージとは異なり不完全なもの、欠陥商品という意味がある。

中古車市場がよくその例に挙げられるが、中古車の売り手と買い手を考えると、売り手は、その車の品質がどの程度のものか、事故車なのかどうかといったような車の状態をほぼ正確に知っている。一方、中古車の買い手は、仮にその車の品質が悪いケースや、事故車のような欠陥車であっても、修理や整備が施され、一見ピカピカになった中古車を見ただけで、その車の真の状態を知ることは極めて困難である。

手が品質の高い中古車に高い価格をつけて売ろうとしても、買い手は、高い価格を払おうとしない。(品質の低い中古車を高い価格で買ってしまう危険性があるから)。このため、中古車市場に売りに出されるのは、結局、質の悪い中古車だけということになり、最終的には市場そのものがなくなってしまう可能性もある。

このような情報の非対称性を解消する方法が″適正な表示″である。

表示が適正に行われないと、消費者にとってだけでなく、事業者にとつても(市場が縮小・消滅するという意味で)損害を被ることになる。

日本において、消費者が中古車を中古車販売業者から購入する市場が存在しているのは、中古自動車販売業者による表示を消費者が(少なくともある程度)信用しているからであり、これは、中古自動車販売業者等による表示適正化に向けた努力の成果といえよう。

(菅久修一『景品表示法』商事法務2005)

放送基準には、「視聴者の利益」に関する条項はありますが、「広告主の利益」に関する条項がありません。民放としては広告主とWIN-WINの間であるはずなのに、なぜでしょうか?

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コラム著者/代表紹介

合同会社アドリーガル 代表社員(CM考査アドバイザー)
保有資格:消費生活コンサルタント
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会会員

1945年生まれの博多っ子。
1968年慶應義塾大学法学部政治学科卒業
同年RKB毎日放送入社
1998年第6回日本広告連盟広告大賞「ありがとう~世界一短い感謝状~」プロデューサー
2006年までRKB毎日放送ラジオCM考査責任者 退職
2008年から合同会社アドリーガルを創立し、現在に至る。

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